AP通信によると、オバマ大統領が初当選した2008年の大統領選では、全米の主要新聞100社のうち92社が「候補支持」を明らかにしたが、2020年の前回の大統領選では、バイデン氏、トランプ氏のどちらかを支持することを表明した新聞社は54社にとどまった。
1人の候補を支持することで、反対の意見を持つ企業などが反発し、広告収入に影響が出るとの懸念が、新聞社の「候補支持」を止めさせている。
世論の分断が深刻化した現状では、こうした傾向は強まる一方だ。米国の新聞界をリードするニューヨーク・タイムズは、今回の大統領選ではハリス氏を支持することを表明しているが、今後は大統領選以外の選挙では「支持候補」を表明しないことを発表している。
ただ、地方の選挙などでは、どんな候補者が何を訴え、何が正確な事実なのかわからないのが実態だ。米国の選挙戦ではライバル候補を徹底的にけなすテレビコマーシャルが、耳にタコができるほど流れる。さらにソーシャルメディアの発達で、本当かうそか判別しにくい情報があふれている。候補者をきちんと理解することは市民にとって至難の業といってもいい。
こうした社会の流れの中で、カネの事情でメディアの姿勢を変えるとしたら、読者への最大の裏切りである。米国のジャーナリズムは重大な岐路に立たされている。