これはなにか起こるんじゃないかと思わせるような、手に汗握るじわじわ展開。でも、握るのはおにぎり。
塩を多めにかけてしまった水季が、払おうと津野の手のひらに軽く触れる。恋に慣れていない津野くんの膨らむ一方の期待と、自信が確固たるものとなっていく心情を池松壮亮が巧みに演じている。
お金の不安をこぼす水季に、ついに津野は一緒に暮らす提案をする。交際飛び越えてプロポーズのようになっている。だが水季は「津野さんのこと好きです」「手とか握れます」とか言いながら、ぎりぎりのところでストップをかける。もしやこれって水商売の手口では?
津野の気持ちをさんざん揺さぶって、人が悪いなあと思うけれど、水季がほんのちょっとだけ息抜きしたい気持ちだったとしたら、否定はできない。
◆結局は、夏のことが忘れられないのかも
海を預けて、足にブルーのペディキュアを塗って、マスカラつけて出かける娘がいつもと違うことに文音(大竹しのぶ)は気づいていたが、とがめずむしろ、たまの息抜きを肯定してくれた。それでも水季は海のことが気にかかってしまう。
だんだんと、子供よりも恋人のプライオリティが高くなり、そのうち、その人の子供が欲しくなることを水季は警戒する。なかにはそのままその欲望に忠実になる人もいれば、水季のように必死に抑制しようとする人もいるのだろう。
傍から見れば、水季の選択が好ましい気がするが、でもそれだとしんどいだろうなあとも思う。だってやっぱりわくわくしたいものだもの。
とはいえ、水季の場合は勝手に夏と別れてシンママになる意地を通しているだけなので、素直に応援し辛いのだが……。
結局は、夏のことが忘れられなくて、やすやすと夏を上書きできてしまいそうな申し分ない津野に心が向かうことを留めているだけなのかも。じつは、水季、ドラマティックなシンママというヒロインの道が思い通りの生き方だったりして。