もちろん肉も魚も食べていましたから、魚だけが良いという空気はまったくなく、その理由は私が大学生になったときに知ったほどでした。母は、食育や栄養面での理屈を子どもに押し付けることは一切なく、子どもが魚料理を喜んで食べる環境を作ってくれていたのです。

◆大人が“食材に対する印象や価値観”を植え付けないこと

魚
 このような母に育ててもらい、自分が食育を研究する立場として大切にしているのは、大人が最初に「扱うのが難しいけれど、魚は肉よりも良い」という印象や価値観を植えつけないということ。食事や食育を考えるにあたり、子どもに対して理屈や言葉ですべてを説明しようとしないことです。

 もちろん栄養面から考えた場合、これまで肉メインだった食卓に魚食が加わるとしたらメリットも出てくるでしょう。でもそればかりが目的では楽しくないし、つまらない。食事を準備する大人も力が入るし、考えるだけで気疲れしてしまいます。

 もっと気楽に考えながら、自分の家庭にあった魚料理を探していけば大成功。魚を買うシーンを想像したとき、肉と同様に切り身や加工品などがそろっていることにも気がつくでしょう。

 最近では寿司や魚総菜に力を入れているスーパーが驚くほど増えています。もし親が魚の扱いや食べ方を知らない、親近感を抱けない場合でも不安になる必要はまったくありません。親子で一緒に調べて、便利な商品を見つけたりしていけばよいと思います。

◆いろいろな魚を知ることが、おいしい食育につながる

シシャモは丸ごと食べられる魚
シシャモは丸ごと食べられる魚。魚によって食べ方が違うことを、少しずつ楽しみながら覚えていけば、無理ない食育につながります
 魚料理と言っても、焼き魚、煮魚、切り身のムニエル、一口大のから揚げなど、さまざまなものがあります。

 子どもたちにとっては初めて見るものも多いことでしょう。頭や骨ごと食べられるシシャモがあるかと思えば、小骨に注意をしなければならないサンマやイワシもあります。