◆出場する側から伝える側へ

オリンピック
※イメージです(以下同じ)
 喋りのプロであるアナウンサーは呼吸するように言葉を繰り出すが、別に内村が簡単にペラペラ話す必要はない。だけどSNS上やネット記事では辛辣な意見が多く、常に淡々とした内村のコメントが「やる気がない」と批判されてしまう。そもそもやる気というのは表面的な態度だけで測れるものだろうか?

 内村航平という人は、現役時代からずっとクールで、淡々としていた。それが内村の持ち味だし、ナビゲーターになってもそのスタイルは変わらないだけ。深夜から朝方まで注目の競技が放送されることを考えると、あれくらいのロウ・キーなテンションでコメントしてくれたほうが聞き心地がいいけどなぁ。

 内村が現役を引退したのは2022年。引退イベントには6500人のファンが集まった。現在は、日本初のプロ体操選手として活動している。オリンピック選手でなくとも、彼は今でも現役の体操選手なのだ。ナビゲーターを引き受けた背景には、出場する側から伝える側へ幅を広げようとする意志もある。

 だから単に現地の様子を客観的にリポートするのは、内村の役目ではないと筆者は思うのだ。内村にしか感じられない、強烈な主観に基づいたコメントで構わない。それが唯一無二の内村節の説得力なのだから。