夏クールの月9『海のはじまり』(フジテレビ系)では、子どもの親が死んだことで主人公が大変なことになっていましたが、逆に死んだと思っていた親が生きていたことで主人公たちが大変なことになりそうなのが、ドラマ『わたしの宝物』(同)。

 第1話では夫のモラハラに耐えかねた人妻が不倫に走り、その不倫相手の子どもを妊娠。夫を捨てて間男と一緒になろうと思ったら、その間男が渡航先のアフリカでテロに巻き込まれ死亡。第2話では、その人妻が妊娠した子どもを夫の子と偽って“托卵”生活を送ることを決意して出産するものの、実は間男が生きていて、しかも日本に帰ってその人妻と結婚するつもりらしい、というところまでの約1年間が実に手際よく、ジェットコースター展開で描かれました。

 迎えた第3話では一転、時系列はほとんど進まず、子どもが産まれてからの1カ月がじっくり描かれます。じっくり、ねっとり、ギリギリと弓を引くように描かれたのは、壊れることが約束された夫婦の幸せというものでした。あー、怖。怖いドラマだわ。振り返りましょう。

■間男の帰還と、モラハラ夫の改心

 間男こと年下のかわいい男・冬月(深澤辰哉)はテロで負った傷もすっかり癒えたようで、部下のリサ(さとうほなみ)とともに日本に帰ってきます。冬月の死が誤報だったことは日本でも報じられていたようですが、子どもが産まれたばかりでてんやわんやの人妻・ミワさん(松本若菜)は冬月が生きていたことなど知る由もありません。

 出産前は「自分は父親はやらない、金だけ入れる」と宣言していた夫・ヒロキ(田中圭)の意向もあって、かいがいしく育児に勤しむミワさん。ひとつだけ「娘の名前をつけてほしい」とヒロキにお願いします。それはミワさんにとって、実際には冬月の子である赤ちゃんを「ヒロキの子」として脳裏に固着させるための作業だったに違いありません。相変わらず“托卵”して育てていくことへの罪悪感は拭えませんが、こうしてひとつずつ、「この子はヒロキの子」と自分自身に暗示をかけていくしかないのでしょう。何しろ、冬月はもう死んじゃった(と思い込んでる)からね。