「経験も成長もしたくありません」

 主人公のそんな切実な叫びが、深夜のテレビ画面いっぱいに響き渡りました。ガールズアクションドラマ『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』(毎週水曜 深夜1時~、テレビ東京系)の後半シリーズ「ジョブローテーション編」がいよいよ本格化しました。鉄壁のコンビネーションを誇ってきたガールズアサシンチーム、杉本ちさと(髙石あかり)と深川まひろ(伊澤彩織)はついに引き離され、予測のつかない展開が今夜から待ち受けています。

 劇場版第1作『ベイビーわるきゅーれ』(2021年)でもアルバイト先のメイドカフェにうまく順応したあかりは、殺し屋協会の営業部である「オフィス向日葵」で内勤を経験することになります。部長の山下(後藤剛範)をはじめ、超イケイケの体育会系の職場です。

 殺しの値段はさまざまなようです。営業部のエース・三好(一ノ瀬竜)は一件4000万円の依頼をバンバン成立させてきたそうです。殺しの依頼者は、それだけの報酬を支払っても元が取れるんですね。「日給15万円」を謳った闇バイトが世間を賑わせているわけで、マジで怖い世の中になったなぁと思わせます。

 殺しの報酬はかなり高額なことが分かりましたが、そのわりにはちさと&まひろのシェアハウス生活は、かなり質素なものです。殺し屋協会の仕組みを知ったちさとは、自分たち現場で働く労働者が搾取されている事実に気づくのではないでしょうか。ちさとは営業部に染まっていくのか、それとも組織の運営方法に反発することになるのか。大きな分岐点を迎えそうです。

 会社という合法的な組織は、実は非常に不条理な集団です。個人の意思や感情を押しつぶすことで大きく成長していく、一種のモンスターです。ちさまひの日常生活を描く『ベビエブ』は、もしかすると、ふたりが会社組織と闘う壮大な物語なのかもしれません。労働者階級の蜂起を描いた学園闘争時代のバイブル的コミック『カムイ伝』みたいな展開になってもおかしくありません。

ちさとの将来を暗示させる「粛清さん」