いきなり話題がえらく遠くなったと思われるかもしれないが、ここでわざわざ昭和の名優の名をだしたのにはちゃんと理由がある。筆者が偏愛する鶴田主演作『明治侠客伝 三代目襲名』(1965年)冒頭近くで主人公が緑色の暖簾からちょこっと顔をだして人探しをする場面がある。これが昭和最大の激萌え仕草だと思っているのだが、『青島くんはいじわる』第4話で温泉宿に泊まった青島が男湯のうす青色の暖簾をくぐる場面は、令和最強の美しさを誇る萌えとして認定されるべきだと思ったからだ。

◆初MC番組から演技まですべてが地続き

 あぁそうだ、連ドラ初単独主演作『先生さようなら』(日本テレビ、2024年)でも主題歌が絶妙なタイミングでぴたりと画面にはまっていた。第1話、渡辺演じる美術教師・田邑拓郎(めがねをかけたしょっぴーもいい!)が、好きなことが特にないと決め込んで、漠然と学校生活を送っている城嶋弥生(林芽亜里)にデッサンの手ほどきをする場面。ふたりだけの教室内。外はすでに暗い。窓際の渡辺が立ち上がった瞬間にSnow Manの主題歌「We’ll go together」が画面とぴったりはまる。

 トップバッターはもちろん渡辺。『青島くんはいじわる』では、主題歌が大抵屋外シーンでかかるのに対してこちらは、『先輩と彼女』(2015年)などでも知られ、特に教室の窓際あたりに情感を作る才人、池田千尋監督が演出する密室的屋内。両作それぞれの空間で微妙に色気の漂わせ方が変わるのだが、『先生さようなら』第2話で主題歌がかかる直前、夜の室内で「だって俺、先生にとって、特別っしょ?」と台詞を発する渡辺の色っぽさはただ事ではないと思った。

 アイドルの資質と俳優の才能が見事にオーバーラップする。この色っぽさをいつまでも画面上にとどめていようとする意志でもあるかのようなタイミングで「We’ll go together」がかかる。同曲のミュージックビデオがもっとすごい。冒頭、渡辺本人に導かれてエレベーターを降りるとそこはレストラン。シャンパングラスを傾けるショットにもう完全にとろけてしまう。