逆に、そういう一条天皇の御代は、藤原道長の子孫にとっては自分たち摂関家の意向がすべて反映された「黄金時代」でしたから、それを「聖朝」だと言いたくなる気持ちはよくわかります。
最後に、次回予告で天皇に即位できた三条天皇が「関白になってくれないか?」という打診をしたあたりの部分について補足しておきますね。史実では道長は三条天皇から関白職の打診をうけたのに断っています。関白になると、公卿たちの会議(陣定)に出られなくなって、会議をわが意のままに操ることができないからだと思われます。道長にとっての三条天皇は早くに亡くなった実姉・超子の息子にあたり、叔父と甥の関係なのですが、ドラマにも超子が登場しなかったように、道長にとっての超子は詮子(吉田羊さん)のように距離が近い姉ではなかったことが影響し、三条天皇に対しても「身内」という感覚ではなかったようですね。
道長から冷たくあしらわれ、朝廷内で孤立する一方だった三条天皇は、藤原実資(秋山竜次さん)に助けを求めますが、実資も道長に反旗を翻すようなことはありませんでした。おそらくこういう部分についても、ようやく悪役っぽくなってきた道長の采配というより、三条天皇の人間的欠陥が理由であるかのようにドラマは描く気もしますが……残り話数少なくなってきた『光る君へ』、どう見ても道長を黒幕として描かざるをえない局面をどのように乗り切るのでしょうか。