というのも、結局巨額の広告料を払ってくれるのは、トヨタや日産のような、そこそこの地位や年収がある中高年をメイン購買層とする企業だからです。購買層に合わない番組には広告料を払ってもらえません。かといってコア視聴率も狙い通りにとれない。そうなるとスポンサー獲得が優先され、中高年回帰になるのは仕方のない流れです」

 そもそも民放が若年層に番組を見てもらおうとアピールし始めたのは、15年ほど前に遡るという。

「それまで視聴率といえば『世帯視聴率』のことでした。ただこれからは個人視聴率重視の時代だということで、2020年3月30日にビデオリサーチ社が『新視聴率調査』をスタート。そうした動きを早くから察知していた局では、スポンサー獲得を目的として、若年層を見据えた番組づくりに発破がかけられました」

 しかし、そうこうするうちにスマホ及び動画配信サービスが普及。若者がテレビ離れをするうえに、番組を見るとしても「CMが鬱陶しいので、リアルタイムでは見ない」という人も増加した。若者向けの番組づくりをした結果、スポンサー獲得どころかスポンサー離れを招く事態に慌てた営業が悲鳴を上げ、テレビの視聴習慣がまだある中高年を大事にしよう――というのが、「今」の民放のリアルなのだ。