キプタムの世界記録のラップタイムは驚異的で、後半のハーフのタイムは、ハーフマラソンの日本記録より上。30kmから40kmのタイムは27分52秒で、昨年の日本選手権10000mの優勝タイムとほとんど変わりません。キプタムはまだ23歳で、3戦全勝。走るごとに記録を伸ばしており、次のレースでは夢の2時間切りも視野に入っているという。

 さて、東京駅を起点とすると、フルマラソン42.195kmのゴールの距離にある街は八王子、大船、佐倉、桶川といったあたり。そこまで2時間以内に走ろうというのだから、人間が持つ能力の可能性には驚かされるが、笑っていられないのは日本の長距離選手たちだ。

「東京五輪で大迫傑が6位に入ったので、日本勢はマラソンで世界と戦える印象があるかもしれませんが、それは五輪には『1カ国3人まで』というルールがあるから。ケニアやエチオピアには、日本記録より速く走る選手が30人ぐらいいるので、出場制限ルールを取っ払ったら、まるで勝負になりません。

 2000年前後までは日本勢も世界と伍していましたが、15年近く日本記録が更新されない停滞期があり、世界から完全に離されてしまった。シューズの進化でレースが超高速化しているのに、近年の国内主要レースの日本人上位の記録は、まだ昭和の時代に瀬古利彦や中山竹通が出したタイムとさして変わらないのですから、世界に置いていかれると言わざるを得ない。