◆死んでしまおうかと思っていた
――たにゃパパさんとたにゃ君の出会いを教えてください。
たにゃパパ:僕は20年に渡って歌舞伎町で商いをしています。歌舞伎町は日本一の歓楽街。インバウンドもあって、コロナ前は本当に商売がうまくいっていたんです。ところが、2020年。だれも想像してなかったウイルスによって、歌舞伎町は想像を絶するほどの打撃を受けました。
僕の会社も絶望的な状況に追い込まれました。家賃が高いですからね…とにかく売り上げがないとお金が回らない。死んでしまおうかと思うほど、心身ともに疲れ果てていました。
そんなある日の明け方、会社で契約している歌舞伎町の駐車場で1匹の薄汚れた猫が僕をジッと見ていたんです。その猫は、まるで「お前、明日死んじゃうんじゃないの?」とすべてを見透かしたような目をしていました。いつもはにぎわっている歌舞伎町もコロナ禍で静まり返っていて。周りに人がいなかったから僕らは出会えたと思っています。
その日から、どんなに疲れていても朝晩必ずご飯をあげに行きました。僕の名前の一部を取って「たにゃ」と名づけました。たにゃにご飯をあげることが僕の生活の一部になっていきました。たにゃのことを考える時間だけは穏やかで、仕事やお金の悩みから解放される気がしました。
もともと犬派で猫に興味をもったことがなかったのですが、たにゃだけは特別で。たにゃにだけは本音で話せるんです。雨の日も、寒い夜も、クリスマスも、バレンタインデーもたにゃと過ごして。いつしか、たにゃが僕の生きる理由になりました。