源泉徴収なしの特定口座

株式などの売買での損益通算の計算は証券会社などに行ってもらい、納税自体は個人で行うこともできる。特定口座を開設する際に「源泉徴収なし」と選択すればよい。

この場合は、配当所得などとの損益通算は個人が行う。納税も個人が確定申告を行う。証券会社などが作成してくれた「特定口座年間取引報告書」に基づいて書類を作成するので、その分簡便だ。

特定口座以外にも一般口座というものもある。これは株式などの売買の損益、配当所得などとの損益通算の計算を個人が自力で行わなければならない。もちろん、納税も個人が税務署へ確定申告をする。

ただし特定口座であっても、その特定口座の中での損益通算しかしてくれない点には要注意だ。同じ証券会社などでの特定口座と一般口座をまたぐ損益通算や、他の証券会社などの口座をまたぐ損益通算は、それぞれの口座での取引記録などを基に個人が計算と納税を行う。

合計所得金額には反映される

確定申告をした場合、損益通算後の金額は合計所得金額に含まれる。しかし、源泉徴収ありの特別口座を利用し、証券会社などでの源泉徴収で納税を完了し申告不要とした場合には合計所得金額には含まれない。

合計所得金額を気にしなければならない場面は身近にもある。所得税の所得控除には、家族や本人の合計所得金額が一定以下であることが条件のものがある。代表的なものでは、扶養されている主婦などの配偶者控除や配偶者特別控除だ。パートでの給与所得だけなら一定の所得控除があったのに、副収入のつもりで行っていた投資での利益が確定申告で合計所得金額に反映されてしまい、控除対象から外れたり控除枠が小さくなったりすることもある。

他にも、マイホームの売買時に合計所得金額が問題となることがある。合計所得金額が3,000万円を超えると以上住宅ローン控除が受けられなかったり、住宅を売却して損失が出た場合の税の優遇対象から外れたりすることもある。普段から所得が多いか、損益通算しても株式などでの所得が多いかで合計所得金額が3,000万円を超えそうな人は気を付けたい。

先に述べたように、損益通算しても赤字が残れば3年間は繰越控除ができる。ところが、繰越控除は合計所得金額を低くすることはない。合計所得金額とは損益通算後・繰越控除前の金額を指すからだ。前年から繰り越した赤字を差し引く前の、当年の黒字が合計所得金額に含まれる点に注意が必要だ。

源泉徴収ありの特定口座では確定申告をしないので、上記のような合計所得金額が大きくなって困るということは生じない。一方で、基礎控除などの所得控除などを考慮すれば本来税の負担がないのに、証券会社などでの源泉徴収で課税されてしまうということは起こり得る。

専業主婦などで他に所得がない人は、投資で得た所得から基礎控除などの所得控除を引いた額で計算された税額が本来の納税額だ(0円ということもある)。この場合は、確定申告をすることで既に証券会社などで納めた税金を還付してもらうことができる。ただし、先に述べたように、これも確定申告をしたことで合計所得金額に加算されて配偶者控除などに影響することもある。還付額と配偶者控除が使えないことによる増税額とを比較したうえで選択しよう。

損益通算は、課税対象額を減らして納税額を抑えることができる仕組みだ。法律で認められたものに限られるが、幸い金融商品については損益通算の範囲が広がり利用できる環境が整った。その範囲を正確にとらえ、他の課税の仕組みへ及ぼす影響を把握したうえで上手く活用していきたい。

文・ZUU online編集部/ZUU online

【こちらの記事もおすすめ】
知ってた?百貨店「友の会」のボーナスには税金が…
3月が権利確定日!女性にうれしいスパ&エステ優待4選
「冷蔵庫に入らない!」ふるさと納税の失敗を防ぐ3つのステップ
3月が権利確定日!女性にうれしいスパ&エステ優待4選
花粉症対策グッズは「OTCスイッチ医療品」になるの?

※当サイトの情報の内容に関しては万全を期していますが、その内容の正確性および安全性を保証するものではありません。当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社は一切の責任を負いかねます。