多くの人々から惜しまれながらも天国に旅立った大山さんだが、制作関係者は『ドラえもん』に出演するようになった当時について、以下のように振り返る。
「初代ドラえもん役の富田さんはあまり評判が良くなく、テコ入れで2代目に野沢が選ばれましたが、短命で終わることに。そんな中、ジャイアン役のたてかべ和也さん(15年6月に死去、享年80)、スネ夫役の肝付兼太さん(16年10月に死去、享年80)らエース級の声優と共にテレ朝版にキャスティングされた大山さんは、原作者の藤子氏に『ドラえもんってこういう声だったんですね』と言わしめるほど、適役だったようです」(制作会社関係者)
大山さん自身もそれを感じていたのか、ドラえもんを演じることになった際、「すごい出会いをしてしまった」と話していたといい、05年4月に降板するまで、ほかのキャラには声を当てていない。前述の関係者は「『自分の声はドラえもんだけだ』という強い覚悟があったのでしょう」と推測する。
なお、大山さんは声優として活動を始める前は顔出しでドラマや映画に出演しており、「女優としても普通に芝居ができる人」(同)だそう。
「ハスキーで特徴的な声に女優時代はコンプレックスがあったようですが、声優としてはそれが魅力となっていた印象です。また、歴史のある国民的アニメで座長を務めた人ですから、強い信念も持っていました。一方で、のび太役の小原乃梨子さん(今年7月に死去、享年88)とは折り合いが悪かった一面も。現場でほかのメインキャストがフォローすることもありましたが、言い換えると、大山さんが不機嫌な態度を出せるくらい気を許した、“家族”のような現場だったのかもしれません」(同)
後任声優・水田わさび、大山のぶ代さんは「超えられていない」――業界内から厳しい評価
そんな大山さんから役を引き継いだ水田わさびについては、厳しい評価が聞こえてきた。
「水田ももう20年近くドラえもんを演じていますが、大山さんは超えられていない印象があります。自分なりのドラえもんを作ろうとした結果、歪んだドラえもんになっていると感じます。大山さんは“心”で演じていましたが、水田はいくつかドラえもんの“型”を作ってパターン化して演じているところが見えます。大山さんの存在が大きすぎたこともあり、プレッシャーもあるのかもしれません」