左右馬が、友人である警察官・端崎(味方良介)にひとつのウソをつきます。鹿乃子の目の前で、鹿乃子に見破られるとわかっているはずなのに、平然とウソを言っている左右馬。鹿乃子はそんな左右馬の真意を測りかね、困惑してしまいます。

 能力者であったがゆえに、育った村で疎まれ、居場所をなくしていた鹿乃子。その能力を「便利だ」と言って自分を使ってくれた左右馬に感謝の気持ちはありますが、やはりこの能力が左右馬にどう思われているのか、気味悪がられているのではないかという心配は尽きません。

 しかし、実は左右馬は、鹿乃子が自分のウソを見破っていることを理解した上で、端崎を騙していました。それは端崎に対する優しさでもあったし、鹿乃子への信頼を改めて示すためでもありました。

 左右馬は鹿乃子の不安を察したうえで、本当に「受け入れているのだ」と伝えるために、能力者である鹿乃子の能力を手玉に取って見せたのでした。鹿乃子は、自分の「ウソを聞き分ける」という能力があまりに恐れられ、疎まれてきたことにより、その能力を「万能である」「狂暴である」と思っている節がある。しかし、左右馬にとってそれは容易く利用できるものであり、その能力ごと鹿乃子をコントロールし得る類のものだ、だから自分は鹿乃子を恐れないし、気味悪がらない。それだけ受け入れているのだ。

 そういうメッセージは鹿乃子を心の底から安心させるものでしたし、鹿乃子が改めて左右馬に対するリスペクトを抱くにあまりある一連の左右馬の行動でした。

「一緒にいるから悩むんだからさ、一緒に抱えるよ」

 その左右馬の言葉は、鹿乃子の胸をしこたま打ちました。ススキが風になびく夜に包まれて、空を見上げて鹿乃子は思わずつぶやくのでした。

「月がきれいですね」

 この「月がきれいですね」も、原作にはないセリフです。こういうところよ、ステキな原作改変。いやあ、ステキ。

■原作との大きな違い

 ドラマ『嘘解きレトリック』が原作コミックともっとも大きく違う要素は、当たり前なんだけど、人間が演じて、カメラで撮影しているということなんですよね。コミックではわりとコメディとシリアスを行ったり来たりしながら、キャラクターの頭身や表情のタッチを描き分けることでテンポを出しつつお話を進めているわけですが、人間が演じているドラマでは、松本穂香がいきなり3頭身になったり、目と鼻が消えてメガネと口だけになったりすることはできないわけです。