新聞社で文化面を担当しているリツは、大平かなえのインタビュー取材をしていました。その際、リツのリョウに対する思いを見抜いた大平かなえは、リツのことを「押しの弱い当て馬キャラ」だと言いました。大平かなえの恋愛ドラマにはいつだって「当て馬クン」が登場して、その「当て馬クン」の思いが叶うことは、これまで一度もありませんでした。
今回、大平かなえはリツとの出会いと、リョウがリサーチしてきたアプリ女子のエピソードから、「当て馬クン」の思いが叶う物語へと作り直すことにしました。こうなれば、筆が走るのがベテラン脚本家です。あっという間に直しを終え、監督に認めさせることに成功しました。
「すごいのよ、私」
「才能があれば書ける人は書けるの」
リョウにそう語る大平かなえは、自信に満ち溢れています。「才能が枯れた」と絶望し「やっぱり自分には才能がある」と思い直して筆を執る。そうして40年、生きてきたんだよなぁ。リョウが目指す「売れっ子脚本家」とは、途方もない道のりです。
リョウはこのドラマの3話目以降のプロットを任されることになりました。それはそのまま、リツのリョウに対する思いを成就させる物語を、リョウ自身が作っていくということになります。経験が空っぽの脚本家が、もっとも身近な人間をフィクションとして描いていく。大きく心が揺れることになるんだろうなと思うし、ピンピンにトガってたリョウがどんな感じで創作とプライベートの折り合いに向き合っていくかという、とっても楽しみなお話になってきました。おもしろくなると思う、『若草物語』。
あと、余談をひとつ。
むかし『カイジ』(講談社刊)シリーズの福本伸行先生に創作についてお話を伺ったことがあるんですが、福本先生は「ストーリーに詰まったことは一度もない」と言ってましたね。「勝手に出てくる」って。
バケモノかと思ったよね。
(文=どらまっ子AKIちゃん)