ひどくプライドを傷つけられても、監督を納得させるしかない大平かなえ。リョウに実際にアプリを使って男と会い、アプリを使っている男性のリアルな人物像を探ってくることを命じるのでした。

 恋愛に興味がないリョウは渋々ながらアプリで男を漁り始めます。最初に会ったのは、脚本の参考になりそうなオラオラのオレ様系。映画が好きで、特にカーアクションが好きだという男にリョウは興味を抱きかけますが、『ワイスピ』は見るけど『デス・プルーフ』なんて聞いたこともないという男に幻滅。その後もリョウとマッチした男たちは、どいつもこいつも会話さえ通じないヤツばかり。リサーチはまったく進みません。

 ふと、同じ喫茶店でアプリの男と会いまくっていそうなアヤノという女の子に気づいたリョウ。男へのリサーチの代わりに、アプリで男漁りをする女のリアルを存分にヒアリングして大平かなえの元に戻るのでした。

 一方、脚本の進まない大平かなえは荒れに荒れていました。マネージャーの元に、ほかの若手脚本家との差し替えの連絡が入り、すっかり自信を失っています。勢い、大平かなえはリョウに対し、自分が実はまったく恋愛経験がないこと、ゾンビとスプラッターが好きで脚本の世界に入ったのに、たった1本だけ恋愛モノが当たったことにより「恋愛脚本家」になってしまったこと、学生時代に少しだけ経験した恋を何度も焼き直して脚本を書いていることを告白。自分が書いてきた脚本を本棚から乱暴に引き出し、床にばらまきながら、絶望を隠そうとしませんでした。

 40年、こうして生きてきたんだろうな、というシーンです。筆1本で瀟洒なマンションを手に入れ、悠々自適なクリエイター生活を送っているように見えた大平かなえも、他人に認められない不安と、才能が枯れていくことの恐怖に怯えながら生きてきたのです。散らかった部屋をそのままに、ファミレスでひとり生ビールをあおる大平かなえの姿に、胸が詰まります。それが、このドラマの描く「売れっ子脚本家」のリアルでした。

■リツとの関係にシンクロしていく