理由は、明らかに自分の方が稼いでいるのに、おごられたことでおじさんが上で自分は下になって、感謝しなくちゃいけないという関係性になるからだとおっしゃっていました。
おおしま:すごいパワフルな女性の匂いがします。でもそれって、自分が年収とか行為とかで上下をよく意識しているからこそ、抱く感覚ではないでしょうか。
◆おごることで出てくる「上下」問題
林:僕は50代男性なので、彼女の言う感覚はとても良くわかるんです。男性同士でおごると上下は必ずできますし、年齢差があったら割り勘って考えが持てないのが僕らの世代です。この女性がおじさんにおごられることで説教されたくないし、自慢話も聞かされたくないっていう気持ちは分かります。
おおしま:男性と競いながら上昇してきたからこそ、上下といった関係性に敏感なのかもしれませんね。
その話を聞いて、私は比較的「ご馳走します」は素直に受け取るタイプですが、彼と何か一緒にしようみたいになった時は、「自分も頑張るから気を使わないで!」って、ちょっと主張して受け取り拒否をしがちなタイプかもと思いました。
例えば、彼氏と旅行に行こうとなった時、向こうが費用を持つよと言ってくれたのに「いやいや、私も出せますから」みたいに言いがちです。根っこには「相手に悪いな」があるんですけど、これもまた一種の受け取り下手かもしれませんね。
こうして客観的な話をすると、自分のお金のクセがより実感として理解できるような気がします。
【林伸次さん】
渋谷のワインバー「BAR BOSSA(バールボッサ)」店主。中古レコード店、ブラジル料理店、ショット・バーで働いた後、1997年「BAR BOSSA」をオープン。バーを経営する傍ら著作家としても活躍している。著書に『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』(幻冬舎)など。
<取材・文/おおしまりえ 写真/林紘輝>
【おおしまりえ】