「都にも恋しき人の多かればなほこのたびはいかむとぞ思ふ」

都にも恋しい外がたくさんいるからなんとしても生きて帰りたい。

その思いは叶わなかった。

惟規の死の知らせに涙をこぼすまひろ。その背中を賢子がそっとさする。わだかまりを抱えた母と娘の空気を少し変えたのは、惟規の置き土産か。

いや、シンプルにまひろが自分の素直な気持ちを伝えないのがよくないのかもしれない。

もう2人の心を近づけてくれる人はいない。これから母娘がどう向き合っていくかが楽しみだ。

<文/ふくだりょうこ>

【ふくだりょうこ】

大阪府出身。大学卒業後、ゲームシナリオの執筆を中心にフリーのライターとして活動。たれ耳のうさぎと暮らしている。好きなものはお酒と読書とライブ