病気といえば、一条天皇の体調不良と前後するように、史実の道長(柄本佑さん)も寝たきりになるほど体調を崩しました。左大臣・道長の政治に協力的だった藤原実資(秋山竜次さん)は道長の闘病を日記(『小右記』)に事細かく記し、心配そうな様子を見せています。

 一条天皇も前回のコラムでは「ドラマではお元気そう」などと書いた記憶がある中、突然の発病だったので、道長もそうなるかもしれませんが、ドラマで寝込む道長はほとんど描かれることはなかったように記憶しています。一度、彰子(見上愛さん)の入内のころに体調不良だったことがあるくらいでしょうか。史実の道長はしばしば病床に伏していたのですが、その中でも一条天皇崩御直前の病状は重く、食事すらまともに取れない容態が続きました。

 興味深いことにこの時期、道長とその長男の頼通(渡邊圭祐さん)、義母にあたる藤原穆子(石野真子さん、源倫子・黒木華さんの母)など道長に近い者の屋敷に、虹が立つ怪奇現象があって、誰かが強力な陰陽師を雇って道長たちを呪詛しているのではないか、と藤原実資が考えても無理はない状況でした。現在では虹はなんとなく良いものだと思われていますが、平安時代では、凶兆にもなりうる自然現象だったのです。

 こういう超自然的な現象や、それにおののく人々の姿も『光る君へ』は意図的にほとんど排除してしまっているので、そういうところが、ドラマから時代モノとしての奥行きを奪ってしまっているのかな、とも思われますね……。

 道長のように回復する者がいる一方、病死する者もいました。どのような凶兆が現れようと、そして何度倒れても道長は回復し、復活するのでそれは「強いリーダー」の証しになっていましたが、前回、道長の次女・妍子(倉沢杏菜さん)が姉・彰子を訪ね、「18歳も年上のオジサンに嫁がされる~」などと文句を言っていましたが、その対象の居貞親王こと三条天皇(木村達成さん)は体調は芳しくなかったものの道長のようにはなれませんでした。