ドラマの世界には、世の中にじんわりと浸透してきた言葉や現象や空気感を物語に立ち上げ、それを具現化して見せてくれる魔法使いみたいな人がいます。フジテレビの三竿玲子プロデューサーは「それは女にとって」という視点に特化して世の女性たちの関心事をドラマにしてきた人です。
『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』では日中不倫、『あなたがしてくれなくても』では夫婦間のセックスレス、そして今回の『わたしの宝物』では、「托卵」がテーマとなりました。
妻が夫以外の子どもをお腹に宿し、その子を「夫の子」として、夫を騙したまま産み育てていくこと。世の中にはそういうケースもあるのでしょうし、バレずに一生を終えた夫婦もあれば、バレて地獄を見た方々もあるのでしょう。『わたしの宝物』は、そのひとつのモデルケースを提示していくことになります。
普通に考えて「托卵」が起こるケースは妻の不倫、不貞行為が原因であることが大多数でしょうから、法的にも心情的にも「妻が悪い」ということになります。『わたしの宝物』の公式ホームページでも、妻を「悪女」と表現しています。
「悪女になるなら、月夜はおよしよ、素直になりすぎる」とは中島みゆき大先生の名言ですが、くしくもこのドラマがスタートした10月17日は、今年最大の満月「スーパームーン」が夜空に浮かんでいたそうです(本当)。
では第1話、振り返りましょう。
■旧姓で呼んでくるかわいい男
主人公のミワさん(松本若菜)は結婚5年目の専業主婦。結婚当初は仕事をしていたようですが、夫であるヒロキ(田中圭)の「家にいてほしい」という希望もあって、今は家庭に入っています。ごはんもちゃんと作るし、掃除もしっかりしているようだし、夫が夜中に同僚を連れてきても凝ったおつまみを用意するなど、非の打ち所のない良妻です。幼いころからの夢だった「文鳥を飼う生活」も手に入れ、お友達のシンママ・マコト(恒松祐里)ならずとも、羨むところです。