さらに今は地上波のバラエティ番組は流行らず、収益化するのが難しい。ならばDVD化や配信での収益化が見込めるストックコンテンツ、つまりドラマを制作したほうが“マシ”ということもあって、30分ドラマが増え続けているんです」

 尼崎氏によれば、深夜の30分ドラマ枠は、元℃-ute・鈴木愛理主演『推しが上司になりまして』(テレビ東京系)や、吉谷彩子とともに元SUPER☆GiRLS・浅川梨奈がダブル主演を務めた『どうか私より不幸でいて下さい』(日本テレビ系)など、アイドル出身者による俳優への足がかりとなる側面もある。そしてこれも収益に貢献する。一定数の固定ファンがいるため、配信やソフト化である程度の売上が見込めるのだ。

局員が越えられない「1時間ドラマ」の壁

 若手俳優だけでなく、中堅やベテランの俳優も深夜の30分枠に参入し始めている。2023年4月期にテレビ東京系で放送された『週末旅の極意』で主人公の夫婦を演じたのは、観月ありさと吉沢悠だ。このドラマは毎回、実在するORIX HOTELS & RESORTSのホテルに夫婦が宿泊するのが大きな特徴だったが、ドラマそのものがホテルのPRとなっており、尼崎氏は「“新手のタイアップ”としてのマネタイズに挑戦している」と見る。

「ベテラン俳優の主演ドラマとしては、2023年4月期、日本テレビ系で新設された30分ドラマ枠『ドラマDEEP』の第1弾として放送された稲森いずみ主演『夫婦が壊れるとき』が大きなインパクトを残しました。TVerの全話累計再生回数が2500万回突破という空前の再生数を記録し、日テレ内では“深夜ドラマでの収益化を目指せ”と大号令がかかったものです」

 制作費が安上がりで、収益化できる可能性が高い――つまりコスパがいい深夜の30分枠ドラマに民放各局が力を注ぐ傍ら、制作費ばかりがかかるゴールデン・プライムタイムの1時間ドラマは“微妙”な存在になりつつある。「オリジナルのヒットを出すしかない」と尼崎氏は話すが、同時に「局員が越えられない壁」も示唆する。