一方で彼は映画俳優として、加藤泰監督の『緋牡丹博徒 お竜参上』(1970年・雪に落ちるみかんの美しいこと!)や加藤監督の助監督だった本田達男監督のデビュー作『まむしの兄弟 お礼参り』(1971年)など、昭和のヤクザ映画スターの金看板で娯楽を享受する映画観客をただただ楽しませた。

『TOKYO VICE』(WOWOW、2022年)で若いヤクザ役を演じた笠松のたたずまいも素晴らしかった。あれは今どき希少な映画俳優の気質である。菅原文太をわざわざ引き合いにだしてまで、別に笠松の無関心そのものを擁護しようというわけではない。

 日本では芸能人が政治的なものにからんだ発言をするといつもこうなる。政治的発言をはっきりしたら政治的発言はするな。政治的無関心を表明する発言をしてもこうした似たような賑わいになる。

 何が政治的で何が政治的でないのか。そして芸能人が政治的発言をしたら干されるのか。そんなことに関心を寄せることがそれこそ「時間もったいなくない?」と強調しておきたい。総選挙は近い。不都合な世界を生きる国民が、また別の人を選びなおすことになるのか、どうか。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】

音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu