◆たっぷり90ページ、“不倫”を多角的に描いた「15幕」
8巻の巻頭にはまず、名ゼリフが添えられた美しいカラー絵が4P収録。その後、最新話となる15幕の1話だけが収録されています。
“1話だけ”といっても、もともと『セクシー田中さん』は1巻につき、2話ずつの収録。今回の15幕も90ページあり、読み応えのあるボリュームです。
ずっと片想いだった三好と初デートをすることになった田中さんが、全く違う世界で生きてきた三好との付き合い方に戸惑い、さらに“不倫”という言葉に翻弄(ほんろう)されていく様子が描かれています。
◆優しい視点が心に“ぶっささる”最終巻の「名ゼリフ」
ひとりでも多くの人に本編を読んでほしいのでネタバレは避けますが、田中さんの会社の同僚・百瀬や、三好の友人たちとの会話から、“不倫”に対する多様な価値観が浮き彫りになったことが、筆者には印象的でした。
なかでも、次のセリフは、決して“不倫”に関してだけでなく、自分自身の在り方として大切にしたいと思うものでした。
「…不安になると 世間の「常識」で
つい 相手を 裁こうと してしまう
今 目の前に いてくれる相手を
しっかり 知るほうが先なのに」
芦原先生がどれだけ優しく世界を観ていたのかを象徴しているようなセリフ。取り繕われた正論ではない、強くて優しくて美しい言葉が、心にぶっささりました。
◆「編集後記」に綴られた“この先の物語”に驚きと興奮
15幕は「えっ?! どういうこと?」というラスト。連載漫画で次回への“引き”が最後にくるのは必然なので、こればかりは仕方ありません。
が、芦原先生が先々まで練られていた構想の一部――物語の“この先”が、編集後記として文章で綴られています。
芦原先生のご家族のご了承を得て掲載されたというその貴重な文章には、「なるほど、そうくるのか!」「まさか、そんな展開に?!」「やっぱり朱里のキャラ最高じゃん!」「田中さん、がんばれ~!!!」などなど、何話分も読んだような驚きと興奮を覚えました。