サブタイトル案は、藤井道人監督と考えた。藤井監督のオーダーがあり、私がそこから具体化させていったのだが、言ってもいいだろうか私の苦労を。承諾されるまでに150案は出さされた。日本でもバンコクでも寝ても覚めてもサブタイトルを考えていた。もうね、そのレベルになると夢にまで出てくんだよ! 藤井監督が鬼に見えたもん!……失敬。またまた冷静さを失ってしまった。
「ふ~ん。そうなんですね~」
バカなのだろうか。150案出した事を伝えたときのジョニーの感想は興味なさげにたった一言、「ふ~ん。そうなんですね~」だけであったのだ。ワナワナと震える拳を抑えるのに、どれだけの忍耐が必要とされたことか。
ただ、藤井監督、ジョニー、ゲンさん、フクとは、『ヤクザと家族 The Family』で出会い、その後もずっと一緒にやってきた間柄であった。
まだまだ予算だって少なくて、私自身、初めてのことばかりでそれはそれは過酷な現場だった。
だが、みんなで共に乗り越えるという経験を経て、それが絆となり、その後の私の人生を大きく変えていくことになった。
この出会いがなければ、『ムショぼけ』も『インフォーマ』も誕生していない。それは功績としては偉大だったと思っている。すまないが、すぐ自分を褒めてしまうのは許してやってほしい。だって『ムショぼけ』を観て、『インフォーマ』を観て、どれだけの人たちが影響を受けたのか。楽しみにしてくれたのか。それを功績と言わずして何を讃えろというのだ、バカモン!である。
私は器用な人間ではないかもしれない。自分の欲を捨て、さまざまなものを犠牲にしなければ作品を生み出せない。ただしである。それを人前で見せるのが大嫌いなのだ。人前では涼しい顔して、冗談を言っていたい。そして人知れずに努力していたいのである。
人知れずと言いながら、ここで言ってしまっているのは、ほんのご愛嬌だ。
先日、フクから「相談がありますー」と言ってきたときにはピンときていた。寂しい相談であった。だけど私はフクに言った。