久しぶりにまひろとききょうが顔合わせる。友人同士のふたりの会話はすっかり様変わりしてしまった。みな、地位のある大人になってしまった。だからこそ、関係性も変わっていく。
ある意味、それぞれの変わったものと変わらないものがはっきりと描かれた回と言えるのかもしれない。
◆まひろに伝えたかったききょうの想い
紫式部(吉高由里子)と清少納言(ファーストサマーウイカ)、いや、まひろとききょうの対面から始まった第38回。
「光る君の物語、読みました。惹きこまれました」と切り出すききょう。そして「まひろ様はまことに根がお暗い」と言いつつ、つらつらと作品について語り出す。しっかりと物語を読み込んだ上で、まひろの性格も併せて批評。少しばかりの嫌味も混ぜつつも、まひろの「漢籍の知識の深さ」、「この世のできごとを物語に移し替える巧みさ」を指摘し、ちゃんと褒めてもいる。
まひろもききょうがどういう人なのか分かっているので、その言葉をしっかりと受け止めてるように見えた。少し嬉しそうでもある。
まひろはききょうが来ればもっと藤壺は華やかになる、と言うが、ききょうはこれをぴしゃりとはねのける。
ききょうの心は定子だけのもの。「この命は定子様の灯を守り続けるためにある」と言い切る。
そして「私は腹を立てておりますのよ、まひろ様に。源氏の物語を恨んでおりますの」とも。
「源氏物語」が一条天皇(塩野瑛久)の心を動かし、彰子(見上愛)のもとへ渡るようになった。そして皇子も生まれた。一条天皇の心の中に定子以外の女性の存在がある。それを知れば定子が悲しむ……いや、この世にある定子の影が薄くなってしまうような、そんなところかもしれない。ききょうはただ、定子を守りたいのだ。
まひろとききょう、ふたりの豊かな表情が言葉以上の想いを伝えてくる。作家として、誰かを想う人間として、友として、複雑な思いが溢れる様子が胸を打った。