そして、その出オチを上回るカオス。山内はこの日の最高点である96を入れている。展開や物語を重視するコメントを出してきた山内がここにきて最高点を入れてきたことに、山内という芸人がお笑いに対して求めているロマンの形を見た気がした。
ロングコートダディ、ファイヤーサンダーのネタが進むにつれ、ラブレターズが優勝する機運が高まってくる。ネタに笑いながら、最後にはラブレターズに笑ってほしいと思い始めている。
決勝の審査では、審査員全員が点数に差をつけた。
ラブレターズをトップにしたのは、山内ただ1人。じろうと秋山はロコディを1位とし、小峠と飯塚はファイヤーサンダーをもっとも評価した。最終的な結果は、947-946-945。2本ネタをやって、5人が審査をして、2点差の中に3組がひしめき合う、まさに薄氷の勝利だった。
■や団が尻穴じゃなかったら
もしもの話をしたい。いや、飯塚がや団の尻穴を減点対象にしたかどうかもわからないから、もしもの、さらにもしもの話だ。
飯塚がや団に94を入れていたとすると、ファーストステージの点数が476になり、ファイヤーサンダーと1位タイで並んで最終に進んでいたことになる。次点でロコディとラブレターズが475で並ぶが、この2組での投票になっていたとしたら、じろうと飯塚は「96-95」でロコディ、小峠は「96-94」でラブレターズ、同点を付けた山内と秋山の投票次第となり、ラブレターズがファーストで敗退していた可能性も十分にあるのだ。
もしもの、さらにもしもの話だが、尻穴がコント師たちの運命を左右したと考えるとなんだかおもしろいので、そういう結論にしておきたい。
■審査員が全員現役だったこと
審査員が全員現役世代だったこともあり、今回は点数とそれぞれの審査員が作っているネタの内容との対比が実に興味深い大会だった。
ラブレターズの2本目に山内が最高点を入れたことに、「お笑いに対して求めているロマンの形」と書いた。飯塚がシティホテルとファイヤーサンダーを評価して、や団とニッ社に厳しかったこと。逆に小峠がニッ社に大喜びだったこと。破壊と規律、ルールの中と外、やはりそれぞれにロマンを見た気がした。ロコディの1本目、2人の人間の人格と軋轢と許容、それはシソンヌが「野村君」で描いてきた構図そのものだ。