(前編はこちら)

■仕掛けの美しさの最高潮

 その飯塚が今回、最高点の98を与えたのがファイヤーサンダーの「毒舌散歩」だった。やはり仕掛け、発明の強みである。冒頭でこてつが甘噛みした瞬間、一瞬だけ10年のキングオブコメディ「教習所」が頭をよぎって寂しい気分になったが、あとは台本を正確に読んでさえいれば自動的にバカウケしてしまうのが、このネタの仕掛けの強さである。

 cacaoは野球部というモチーフに加えて「めちゃくちゃ上手い奴」という設定までがニッ社とかぶる不運もあったが、じろうと飯塚はcacaoに軍配を上げている。これも笑いの量というより、じろうと飯塚にとってcacaoのほうがより減点対象が少なかったということに見えた。ここは山内の91が響く。山内の91はcacaoのほか、コットンと隣人。展開力と終わり方を重視した審査だと思われる。

 隣人は、昨年2本目に用意していたネタをブラッシュアップしてきた。『キングオブコント』本番においては昨年の続編であるという見方は当然されないわけで、やはりお笑いマニアが集まった準決勝より格段とウケが少なかった。

 そして、ラブレターズである。昨年と同じ10番手。こちらは正しく、ラブレターズというコンビが紡いできた物語の続編だった。ともに39歳、とっくに人の親になっている年代だし、そのキャリアは望まずとも哀愁を感じさせるものだった。突出して高い点数を入れた審査員はひとりもいない。だが、認めざるを得ないコントがそこにあったということだ。

 じろうが審査コメントで溜口の小ささに言及していたが、その発言が図らずも2本目の伏線になった。

■もっと小ささがおもしろくなる

 2本目のラブレターズ、金髪のヅラをかぶって出てきた白人風の溜口は、1本目の父親よりもっと「大きくあるべき」キャラクターである。190センチはあってほしいところ、横にいる可憐な(?)女性と同じくらいしかない。しかも、顔だけデカい。顔がデカいし、クドい。存在だけでおもしろくなってしまっていた。