「母の場合は犯行の動機が不明な状態が26年も続いていて、死刑が確定してから15年の時間が過ぎています。袴田さんはその倍の時間を過ごされてきました。いつ再審が始まるか、再審請求が棄却されるかといった情報は僕らにも全く与えられていません。死刑制度もそうですが、再審制度もブラックボックスの状態です」
「いち早く裁判をやり直すべき」
袴田さんは2014年に47年7カ月ぶりに釈放されたが、9月19日付毎日新聞によると、いつ再審請求が棄却・失効されるかわからない超長期の拘禁で精神をむしばまれ、意思疎通が難しい状態が続いているという。
「袴田事件もメディアで大きく取り上げられるようになったのは再審開始が決定したあとでした。再審が通らなければテレビや新聞は報道してくれません。もっといえば、林真須美死刑囚の息子である僕がどれだけ発言しても、大手マスコミはほとんど取り合ってくれません」
2024年5月末時点で死刑確定者109人のうち再審請求をしているのは53人。再審請求自体に刑の執行を止める効力はなく、2018年に死刑が執行された13人のオウム真理教元幹部も、うち10人は再審請求中だった。
再審法改正や、再審請求と死刑執行をめぐる議論には、「死刑執行を引き延ばすだけの実質的な意味のない再審請求の繰り返しを避けるためにも再審請求中でも執行すべき」という意見もある。
また、死刑が確定した場合、刑事訴訟法は「法務大臣は判決の確定から6か月以内に死刑の執行を命じ、その命令から5日以内に執行する必要がある」としているが、 “訓示規定”と一般には解されているようだ。
「林真須美死刑囚が『強い殺意を持って犯行に及んだ』とするだけの根拠が、法務省側にはないようにも思えます。無意味な拘留を続けないで、いち早く裁判をやり直すべきです。袴田ひで子さんも『殺人犯の姉』と言われ続けてきたわけですが、再審も通っていない段階では、僕はネットで『死刑囚の息子』『殺人鬼の息子』と言われても致し方ない。ただ、やはり歯がゆさを感じています」