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冤罪防止に必要な証拠開示制度

 冤罪事件の原因には捜査機関による自白の誘導・強要、証拠隠しや捏造がよく指摘される。目撃証言の誤り、科学的証拠に対する過信、共犯者による巻き込み供述なども考えられるが、日本の冤罪の場合は「虚偽自白の存在」と「証拠の不開示」(弁護側に有利な証拠が検察側から開示されないこと)が最大の原因とされている。

「検察が日本の司法においては大きな権限を持ちすぎていて、検察に有利な法制度になってしまっているように感じています。過去の死刑再審無罪事件でも、検察は絶対に誤りを認めないし、袴田事件でも検察は『捜査自体に間違いはなかった』で済ませてお詫びのひとつもしないスタンスを貫くでしょう」

 10月8日、検察当局が8日、控訴を断念した。しかし、林真須美死刑囚の長男が指摘したように、畝本直美検事総長は“談話”として「捜査機関の捏造と断じたことに強い不満を抱かざるを得ない」と判決を批判した上で、「長期間にわたり法的地位が不安定な状況に置かれてきたことについて申し訳なく思っております」などと謝罪の姿勢を示したが、この文言は静岡県警本部長および、警察庁長官の発言とほぼ同一である。謝罪の言葉は今のところ出ていない。

 実際、冤罪を防ぐために必要とされるのが、再審段階における証拠開示制度だ。袴田事件では裁判官の勧告もあり、再審段階で600点もの証拠が開示されたが、再審開始決定が確定した時点でも、すべての関連証拠が開示される保証はない。弁護側が証拠開示を請求しても応じてもらえないのが一般的だという。

 弁護側に有利な証拠が埋もれたままにならないように、検察が保有する全証拠のリストとして一覧表を作成し、弁護側に開示する仕組みを設けるべきとの声が高まっている。

 また、誤判により有罪の確定判決を受けた冤罪被害者を救済することを目的とする再審制度の法改正に向けた弁護士会の動きも活発化している。