製作総指揮のグレン・キーンはディズニーで一アニメーターとして活躍し、先述した低迷期にも中心メンバーとして活動していた。それゆえなんとかディズニーアニメの黄金時代を取り戻したいと考えたのだろう、初めて企画の立ち上げから関わって完成させた力作だ。

 原作はグリム童話の『髪長姫』。残酷な内容で知られるグリム童話なので、ディズニー作品のメインターゲットであるお子様たちに受け入れられるよう、内容と登場人物は大幅に変えられている。

 ある王国の王妃は出産を迎えた時、重い病にかかってしまう。王はどんな病も直す「金色の花」を探すよう命じ、兵士たちはその花を抜き取ってくる。花から取られた水を飲んだ王妃は回復し元気な女の子を生んだ。その娘はラプンツェルと名付けられる。

 花の力を独り占めし、若さを何百年も保っていた老婆ゴーテルは、花を取り返そうと城に忍び込む。ところが花の力はラプンツェルの金色の髪に宿っており、髪を切ると失われてしまう。ゴーテルはラプンツェルを攫い、森の奥深くにある塔の中に幽閉してしまう。王国では攫われたラプンツェルがいつか帰ってくることを祈り、毎年誕生日に灯りを灯したランタンを空に飛ばすのだった。

 18年後、成長したラプンツェルは塔に閉じ込められたままだったが、毎年自分の誕生日になると遠くの空に浮かぶ灯りが何なのか知りたがる。だが、自分を母親だと信じ込ませているゴーテルは、外の世界は危険だらけだと塔の外へ出ることを許さなかった。

 ある日、王妃のティアラを盗んだ泥棒のフリン・ライダーは偶然見つけた塔に逃げ込みラプンツェルに出会い、ティアラを塔のどこかに隠されてしまう。

 空に浮かぶ灯りの見える場所まで連れて行ってくれたらティアラを返す、という条件をライダーに飲ませたラプンツェルは初めて塔の外の世界に足を踏み入れる。

 原作では、ラプンツェルは貧しい農夫の子供で、ライダーにあたる人物は王子様という設定だが、本作では立場を逆転させている。これはディズニーアニメの前作『プリンセスと魔法のキス』(2009)が興行的に伸び悩み、