2020年、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに家計を見直し、資産運用を考え始めた人は多いと言います。
しかし、いきなり資産運用を始めるといっても、ハードルは高いもの。そこで、お金の専門家である「ファイナンシャル・プランナー」の上山由紀子(うえやま・ゆきこ)さんに、資産運用のコツをインタビューしました。
その内容を前編・後編にわたってお届けします。
専門家プロフィール
上山由紀子(うえやま・ゆきこ)
上山FP事務所 代表
ファイナンシャル・プランナー(1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®)
鹿児島県曽於市出身。会社勤務時代からファイナンシャル・プランナー資格取得を目指して試験に挑戦。2017年度に上山FP事務所を開設した。「生涯現役、顧客本位」をモットーに、相談業務やセミナー講師、執筆などの活動をしている。また、3年前より傾聴のボランティア講習会等を受け、勉強を続けている。
FP相談に来る人ってどんな人?
——FP相談に来る人の年代や男女比、よくある相談内容を教えてください。
男女比は半々で、1人でいらっしゃる人が多いです。年代は40~60代の方が多いです。
相談内容で多いのは「家計の見直し」「保険の見直し」「定年退職前の方の退職金の受け取り方」といったところです。退職金は一時金で受け取ったほうがいいのか、年金形式で受け取ったほうがいいのか、等ですね。
——FP相談のきっかけで多いものは?
「なかなかお金がたまらないので、なぜか?」「保険の見直しをして貯金を考えていこうかな」という方が多いです。
なかなかお金が貯まらないという方は、お話を伺うとどこかにお金を使い過ぎていることが多いです。そういった方にはまず、固定費の見直しをご提案します。月5000円から1万円ほど節約になるケースが多いです。見直したお金は貯蓄や投資にまわしていくよう、お伝えしています。
——50~60代で貯金をしたい理由は?
老後資金が足りない、という方が多いです。50代ならまだiDeCoに加入できます。現行では60歳未満ですが2022年度からは65歳未満まで国民年金被保険者であれば加入可能です。長く働くことを意識して、節税しながら、やっていくのが一つの考え方かなと思います。
年金の繰り下げ受給も一つの手です。公的年金の場合、受け取る年齢を先延ばしにすることで、本来の受け取り額よりもたくさん受給できます。公的年金を先延ばしにした分、iDeCoを取り崩していく方法もあります。
——FP相談を通じてどのようなことをお伝えしていますか。
特に若い方たちは投資に目を向けていく必要があると思います。そこでは生活に無理のない、自分にあった投資スタイルが大事だなとも思いますし、どれくらいなら自分は投資に耐えられるのか、リスク許容度を知ることが大切です。
さらに、家計を見直してつくったお金を投資に回すのであれば、より心理的な負担はかからないのかなと思います。
投資を始める時の「4つのポイント」
——投資を始めるときのポイントは?
投資を始めるポイントは4つです。
1つ目は、いざというときの生活防衛資金を少なくとも生活費の1ヵ月分、貯めてから投資を始めましょう。(できれば2年分あれば安心)
2つ目に、あなたのリスク許容度を知っておきましょう。
3つ目に、「目的、期間、金額」を決めましょう。たとえば、「老後資金はiDeCoで60歳まで」、「毎月の投資額は◯万円まで」など、日常生活に負担のないような仕組みを作ることが大切です。
4つ目に、投資信託には、市場の指標と同じ動きをするインデックスファンドと市場の指標よりも上回る運用を目指すアクティブファンドがあります。長期で運用することを考えるとインデックスファンドを選ぶ方が良いです。なぜなら、低コストであり、連動する指標についてニュースなどで情報をチェックしやすいためです。
——リスク許容度を具体的に知る方法あれば教えてください。
たとえば45歳から65歳までの20年間、毎月3万円を積み立てて想定利回り約3.2%で運用すると、積み立てたお金は約1000万円となります。その1000万円から300万円の損失が出たと仮定しましょう。
この損失は、65歳から90歳までの25年間で割り算すると毎月1万円の損失になります。老後の毎月の生活費が25万円だとすると、25万円の生活費から1万円少なくなる計算です。
あなたはこの1万円の損失を受け入れられますか?夜も眠れないほどなら、リスク許容度は低め。しかし、どうにか持ちこたえられるのであれば投資に挑戦するのもいいですね。
満足度の高い証券口座の選び方
——インデックスファンドを選ぶコツを教えてください
長期で運用するためには、まずは「信託期限」が無期限のものを選びましょう。また、投資で増えたお金を「複利効果」でどんどん太らせていくには、分配金は受け取らず、再投資に回す方が効率的です。
さらに、長期で運用するのでリターンからの手数料は少ない方が良いです。購入手数料が「ノーロード」(購入手数料が無料)のものや運用管理費用率が低いものを選びましょう。
次に、純資産残高が増え続けているかどうかもチェックしましょう。純資産高が増え続けているということは、そのファンドを良いと考える投資家が多いと考えられるためです。
最後に、ベンチマークとの乖離が小さいところを選ぶこともポイントです。ベンチマークとは、たとえば、日本株式で運用する投資信託が運用の目安としている日経平均株価やTOPIXなどの指数のことです。
——アクティブファンドに興味があるのですが、選び方のコツがあれば教えてください。
基本的に、初めて投資を始める方にはインデックスファンドをおすすめします。アクティブファンドの中から運用成績の良いものを選ぶのが大変であるのと、コストも高いためです。
どうしても興味があるのであれば、そのアクティブファンドがどのような考え方で運用をしているのかをしっかりとリサーチしましょう。さらに、投資にかかる手数料がどのくらいなのか、その手数料を支払ってでも投資をしたいかどうかを考えましょう。
——投資を始める証券会社を選ぶ際、ここをチェックしておくと満足度が高いという部分はどこですか?
自分が使えるポイント、カードとの連携をうまく活用していくと生活面も充実すると思います。例えば、楽天証券は楽天カード決済で投資信託が買えて、ポイントが貯まります。SBI証券だとTポイントが貯まり、なおかつポイントを買付に使えるのも良いと思います。マネックス証券は投資信託を保有しているだけでマネックスポイントが貯まり、ポイントはAmazonギフトやdポイントなどに交換できます。
(後編につづく)
文・fuelle編集部
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