宮原の10年ぶりの復帰仕事を成功させるため、ちさまひは嫌々ながら合宿に参加しています。宮原たちに一日中気を遣う合宿生活に、うんざりする2人でした。おそらく、抜群のコンビネーションを誇るちさまひなら合宿なしで、ミッションをクリアしちゃうでしょう。しかし、今回の「風林火山」プロジェクトは、殺し屋業界の大先輩・宮原の顔を立てながらアシストに徹しなくてはいけません。

 昭和・平成時代に好き勝手にやって稼いできただろう上の世代と、令和時代に自分らなりのやり方で実績を積んできたちさまひでは、価値観がまるで違います。果たしてこの世代間格差は解消されるのでしょうか。

 先週放映された第5話「指導とハラスメントの境界線は」では、宮原は合宿に集まった若い世代が喜ぶと思って「釜めし弁当」を昼食に頼んだのですが、当日になって配達できないことがプロジェクトマネージャーである夏目に伝えられます。気難しい宮原の気分を害さないよう、夏目は自分たちでこっそり釜めし弁当を準備します。釜めしづくりは、殺しの仕事とはまったく関係ありません。宮原への過剰な忖度です。

 溝があるのは、宮原とちさまひの間だけではありません。夏目に釜飯づくりを強要された銃器コーディネーターの武井(天木じゅん)は、夏目をパワハラで訴え、夏目はパラハラ防止の講習を受けさせられます。殺しのリハーサルをしていたまひろに厳しい演出をつけた脚本・演出家の桑原(田島亮)も、やはりパワハラ認定されました。本人に悪意がなくとも、相手がパワハラ、セクハラと感じたら、速攻で加害者扱いされてしまうのが現代社会です。

 かつて厳しい演出で知られた中島哲也監督は『嫌われ松子の一生』(06年)や『告白』(10年)などを大ヒットさせましたが、最近は新作を発表できずにいます。映画監督たちにとって、パワハラやセクハラはとてもセンシティブな問題となっています。そんな問題を、阪元監督はコメディ化しちゃっているわけですが。

「フード理論」が暗示する悪党の最期