監督は、長編初監督作『あみこ』(2017年)が大きな話題になった山中瑶子。同作が「人生を変えた」作品であることを河合は『CINEMAS+』のコラムで書いている。過酷な現実を生きるカナは、山中監督世界ならではのキャラクターであり、その世界に惚れ込んだ河合にしか演じられない。
『あみこ』撮影直前の山中監督は日本大学芸術学部映画学科に在籍していたが、日芸つながりなら、筆者の同期監督である嵐あゆみ監督作『透明の国』(2020年)の主演俳優が、河合だった。渋谷のユーロスペースでの上映会後、ロビーで河合本人と筆者は歓談した。ロビーの角、自動販売機近くの壁際で、慎ましくたたずみ、微笑んでいた。その表情を今でもはっきり覚えている。この壁際が、実は世界への扉だったりして。
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu