しかも、地上波のドラマ制作部門の予算システムとして、外部の演出家、脚本家、演者と長期の独占契約は不可能です。Netflixはその弱みを突いてきたわけで、“勝てる喧嘩”を仕掛けてきたといえます」(尼崎氏・以下同)

■東宝スタジオを借りてから、日本発作品が勢いを増すネトフリ

 かつてのNetflixといえば、『愛の不時着』『梨泰院クラス』『ストレンジャー・シングス』など、韓国作品を含む海外ドラマが目玉コンテンツだった。しかし、昨今では『地面師たち』のほか、1980年代の女子プロレスを描いたゆりやんレトリィバァ主演の『極悪女王』、賀来賢人が主演と原案を務めた『忍びの家 House of Ninjas』など、日本の話題作も数多く登場している。背景として尼崎氏は、Netflixが2021年から東宝のスタジオを貸借契約していることも大きいと指摘する。

「ドラマ制作において民放各局の大きなメリットは、スタジオを自社で持っていることです。通常スタジオを借りると1日数十万円~100万円レベルのお金がかかりますが、民放各局はそれが自前で使える。Netflixも東宝のスタジオを拠点にすることで、よりコンテンツの競争力を高められるようになっている。そうなると、民放はもうNetflixの莫大な資金力には太刀打ちできないでしょう」

 Netflixなどの配信サービスでは、スポンサーや事務所との“しがらみ”が少ないことが大きなアドバンテージだ。だからこそ、クリエイターとしてもより自由な表現が可能となる。大根監督としても、そこが最大のメリットとなっていたはずである。

「民放の場合、スポンサーに気を遣ったり、出演者の所属事務所との兼ね合いがあったりして、何もかもを自由にやることは難しい。また、激しい濡れ場のような表現も民放ではできない。しかし、Netflixであれば圧倒的に自由度は高いし、制作費も桁違いです。いわゆる“不祥事”を起こした芸能人も、地上波ではさまざまな忖度がはたらきますが、Netflixなら“実力”という一点のみで起用できます。そういった環境で作ればさらに新しい、刺激的なものが生まれてくる可能性が高いと思います」