塾長はわたしに「息子さんは精神的に幼いです。精神年齢が低いと、時間感覚がなくて先の見通しが立たない。逆に精神年齢の高い子は先のことを予測して今やるべきことがわかるので、来年の受験のために勉強しようと思えるんです。でもそれは息子さんには無理なことで、小学生ならばらつきがあって仕方がないこと。でも息子さんのような幼い子なんてたくさんいますし見慣れています。ご安心ください。すべて面倒見ます」と言い切ってくれました。
ボロボロになっていたわたしはこの言葉に思わず涙ぐんでしまいました。実は息子は小さいころからほかの子と違う部分も多かったのです。
幼稚園の見学では小さい子の集団を怖がり、場所見知りもひどくて知らない場所には頑として行きたがらない。納得いかないことをやらされることも苦手。だからといって発達相談に行っても問題なし。わたしが見ていると同年代の子どもたちと明らかに何かが違うのですが、なんとか周りに合わせられてしまうため、はた目には「ただのおとなしい子」として埋もれてしまっていました。
塾長の「同じような子をたくさん見ています」という発言は、小さいころから感じていた息子への不安まで解消してくれるような一言でした。「うちの子だけじゃないのだ」ということが分かっただけで、なんだか安心できたのです。
塾長には、息子についての話に加え、わたしが乳がん治療をしていることも伝えました。自分の治療に必死で息子の勉強について考えることが遅れてしまい焦っていること、抗がん剤の影響かどうかははっきりしないけれど、とても悩んで混乱してしまっていたこと。きちんと話を聞いてくださり、事情をわかった上で「責任をもって預かります。お任せください」と言い切ってくれた塾長には本当に今でも感謝しています。
息子が小さいころから積もりに積もっていた育児の悩みと、今現在の方向性が決まり、がん治療とともに、プライベートまで大混乱だった状況が、ひとつずつほぐれていくのを感じました。これが息を吹き返す大きなきっかけだったかもしれません。