『降り積もれ』の小日向さん同様、ドラマそのものの世界観を背負っていたのが『海のはじまり』の古川琴音が演じた水季というキャラクター。
結局のところ、水季が堕ろすって言ったのに勝手に産んだことで話がややこしくなりましたし、早く死んだことでさらに話がややこしくなったわけですが、裏を返せば「堕ろすって言ったんだから堕ろせよ」「産んだならガンになってんじゃねえよ」「そんで死ぬならおとなしく黙って死ねよ」という批判を浴びてしまう立場なんですよね。実際、オブラートに包まれた上記のようなポストを放送中にはたくさん見かけました。世の中って怖いよね。
そういう立場の人物を「大切なものを大切にしてるだけです」というメッセージを明確に放出しながら演じていたと思うし、大学時代にあんな感じだった女の子ってママになるとこんな感じなんだ、というリアリティもありました。
■脚本賞/『ビリオン×スクール』
そりゃね、生方さんじゃないんかい、と思うんですけど、今回はこっちなんです。
学園ドラマの定番シチュエーションを丁寧になぞりながら、「AI教師」という現代的なテーマを持ったSFにしようというコンセプトがあって、学園ドラマとしてもSFとしても、言いたいことをちゃんとセリフにして、しかももっとも圧のかかる場面で役者に吐き出させるということを恐れずにやってきたな、と思うんですよ。アイディアとメッセージの両立というところで、全部が成功していたわけじゃないけど、目の覚めるような瞬間がいくつもありました。レビューの中でも何度か言ったけど、第2話のAIメガネでイジメを克服する場面ね、本当にすごいSFを見たと思ったんです。
それと、「夏休み」とか「文化祭」とか、学校におけるイベントについての扱いも、「素敵なものだ」というところから物語を組み上げているんですよね。まったくスカしてない。
何もスカしてないんですよね。なんか昨今、スカしてるやつ(ひろゆきとか)がチヤホヤされてるじゃないですか。そういう風潮に対するアンチテーゼみたいなものを感じられたのが、いちばんこのドラマが好きだった理由かもしれません。我人祥太さん、たくさんお仕事が入りますように。