『海のはじまり』というドラマは、「個性も情熱もない空っぽな男でもセックスしたら子どもができるよ」という現実をくっきりはっきり突き付けるという物語であって、終始、目黒が演じた夏くんという人物には「受動的であること」が求められたわけですが、そういう人に見えたもんね。大竹しのぶに「この子はあんたの子だ」って言われたり、池松壮亮に「おまえ」って言われたり、そのたびに鳩が豆鉄砲を食ったような顔になってたところ、夏くんというキャラクターを的確に表現していたと思います。
成田凌も山田涼介も持ち味が出ててよかったけど、今回の中でもっとも「代わりがいなそう」な役をやりきったのは目黒くんでした。
■主演女優賞/小池栄子
『新宿野戦病院』、ラスト2話の脚本の不出来で完全にテンション下がっちゃったけど、小池栄子の演じた無免許医ヨウコ・ニシ・フリーマンは印象に残るキャラクターになりました。
英語ネイティブの設定なのにネイティブっぽくないとかで最初のころはウダウダ言われてましたが、中盤以降はそこらへんも含めて味になっていましたし、目ん玉をカッ開いたときの顔面の迫力たるや、もうね。
後半に出てきた、いかにも女医然とした女医さんを演じたともさかりえとのコントラストもあって、ジェンダーレスな雰囲気も作風とよく合っていたと思います。
『南くん』の飯沼愛も超がんばってたし、かわいかった。新人賞。
■助演男優賞/小日向文世
助演男優賞は『降り積もれ』の小日向文世で間違いないでしょう。
この作品は小日向の灰川十三という役そのものが、イコールこのドラマの世界観といえる作品でした。どっからどう見ても圧倒的に「まともじゃない」人物なのに、出てくると画面がキュッと締まる感じ。
このドラマは謎そのものが主役になっていると何度も言ってますが、その謎をすべて背負い切るだけの懐を感じさせる佇まいだったと思います。キャラクターとして、不気味なのに頑丈という、ちょっと相反する要素を表現していました。