その一方で、国際的に見ると、13.3%という数値は極めて低い水準にある。出産や育児を機に女性のキャリア形成を断絶させない環境づくりは、企業にとっても、日本社会全体にとっても喫緊の課題の一つです。特に上場企業の場合、有価証券報告書に『女性管理職比率』や『男女の賃金の差異』などを載せないといけません。当然、投資家からも厳しい目を向けられる。女性活躍を促進すべきというのは、大企業ではもはや共通の認識です。

 人手不足が深刻になりやすい中小企業でも、遅れているところはありますが、人手不足を解決するために女性が活躍できる環境を用意する必要性が高まっています」

◆アメリカでは夫婦の約3分の1が「妻のほうが高収入」

 こうした時代の追い風を背に受け、妻の年収を戦略的に伸ばして世帯収入を爆上げしている夫婦が増えつつあるという。

女性 管理職
 山口氏も「誰もが役職に就けるわけでもなく、昇進の声がかかわるわけではありません。性別や役割にこだわらず、チャンスをいかして世帯年収をあげるのは賢い生存戦略です」と推奨しつつも、その一方で渋い表情を覗かせました。

「アメリカでは、夫より稼いでいる妻は、異性婚における夫婦の約4分の1にのぼります。対して日本の場合、ここ最近で夫より年収が高い妻が増えつつあるといっても、それはまだ5%ほどと、かなり低い水準です。男女の賃金格差の是正は、今後の取り組むべき課題と言えますが、ほかの先進国を見ても、夫の所得のほうが妻より高いのは共通しています」

◆北欧でも以前は男性の育休取得率は低かった

 では、就労環境や制度を整えたらこの問題が根本的に解決するかと言えば、一筋縄ではいかぬよう。山口氏はこう続けます。

「男性の視点に立てば、女性が経済力を手に入れ、夫婦が完全二馬力になることで、経済的な意味でも生活の選択肢の幅が広がるし、男性がこれまで背負っていた大黒柱的な役割を妻と分かち合える分、負担や責任からもずいぶん解放されます。