画面奥から手前へゆらゆら。寄りの表情を見ると、うっすらにやけている。それが不気味でもある。第一声にはボソボソ感が少ない。同じ時代劇作品で公開年が近いものだと北野武監督の『首』(2023年)がある。
同作での黒田官兵衛役では、引きの画面で印象付くたどたどしいボソボソ声が逆に魅力的だった。それに対して『SHOGUN 将軍』の寄りの馬上シーンのゆるがないゆらゆら感は、浅野忠信の次なる唯一無二を揺り動かす。
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu