◆ジェンダーレスでファッショナブルな文化圏
こうした浅野のポストを見て意外に思った人もいるかもしれないが、ジェンダーレスでファッショナブルな文化圏の中で考える浅野忠信の面白さが、実は他にもある。
『GQ JAPAN』で連載された特集『男らしさって』って何? 浅野登場回(2020年3月20日掲載)。2018年から2021年までイタリアのファッションブランド「ボッテガ・ヴェネタ」のクリエイティブ・ディレクターを務めたダニエル・リーによるジェンダーレスな衣装を浅野が着た。スタイリスト・北村道子によるスタイリング。大胆に胸毛を露出することで、同特集が問う「男らしさ」とのたわむれを感じさせる。
インタビューで浅野は「本音を言うと、スカートがうらやましいんです」と答えている。自分が知らない世界に足を踏み込み、どっぷり浸かってみる。そこから自由に興味の幅が広がる。「男らしさ」の枠から考えられがちな浅野が、ジェンダーレスな文化圏から唯一無二のイメージを新たに浮かび上がらせる。とても刺激的だ。
◆エミー賞授賞式を経験したこと
自分の新世界を知ろうとするスタンスが、これまでの俳優人生を豊かに発展させてきたのだろう。2011年にはクリス・ヘムズワース主演のマーベル映画『マイティ・ソー』でハリウッド映画進出を果たしている。
今回のエミー賞授賞式を経験したことで「自分がここに立っているということを認識し、エミー賞にノミネートされるということの重みと意義を考えなければいけない」と『TOWON & COUNTRY』誌に答えている。
浅野が噛み締める「重みと意義」についてはぼくらもよく考えてみる必要があるのだが、少なくとも『SHOGUN 将軍』の画面上からはっきりわかることがある。浅田が演じる伊豆領主・樫木薮重が第1話で初登場する場面。領地にやってきた薮重が馬上でひたらすらゆらゆらと揺れている。