現代によれば、この美術館は隈の出世作だという。彼の建築の特徴である木造ルーパー(格子)が初めて高い評価を受け、「木の匠」として次々に仕事が舞い込むようになったというのである。
だが建築家で現代の棟梁の宇野友明はこう疑問を投げかける。
「彼のやっていることは木造建築というよりも、木の表面に貼る『木のデコレーション』のような印象です。そのなかには木ですらなく、アルミにプリントしたものもあります。『木の匠』と評されていることには疑問を抱いています」
隈が手掛けた建築物は日本だけでも200を超すという。大阪万博にも彼が設計する「いのちをつむぐ(EARTH MART)」をテーマに、転用可能な素材“茅”を大胆に使ったパビリオンがつくられるそうだ。
今や世界的な建築家である隈研吾は、こうした疑問に対して丁寧に説明する義務があるはずである。
さて、大の里である。
「大相撲秋場所は21日、東京・国技館で14日目があり、関脇大の里(24)=本名・中村泰輝(だいき)、石川県津幡町出身、二所ノ関部屋=が13勝目を挙げ、2場所ぶり2度目の優勝を決めた。昭和以降で最速となる、初土俵から所要9場所での大関昇進を確実にした」(朝日新聞Digital 9月22日 5時00分)
192センチ、182キロの恵まれた体躯。出足も鋭く、電車道を一気に走り抜ける取り口は、令和の大鵬、柏戸といってもいいだろう。
好敵手だった尊富士は、優勝した次の場所を足のケガで休場し、十両に落ちてしまったが、今場所は見事に十両優勝した。
来場所はもしかすると大の里と対戦する可能性があるかもしれないが、それ以外は、大の里の敵ではない。一気に横綱まで駆け上がる勢いだ。
だが、見方を変えれば、ろくな力士がいないということでもある。一人横綱である照ノ富士は出てはすぐに休場というていたらく。大関二人は勝ち越しも難しい有様。私が見てきた大相撲の中でも最低ランクといってもいいのではないか。