◆アップデート②お見合いで男になじられるシーンで主人公に恥の感情を与えない

女学校の卒業を間近に控えた寅子に、両親は見合いの席を用意する。当時は女学校を出たら結婚するのが一般的、なんなら在学中に結婚してもよい。現に、寅子の同級生にして親友の花江も結婚が決まっている。しかも、寅子の兄と。

結婚そのものへの違和感を隠さない寅子だが、見合い相手が「さまざまな話題をともに語り合える関係」を望んでいると言ったのに勢いを得て、国際情勢や女性の社会進出について、立て板に水のごとく話し出す。

虎に翼×瀧波ユカリ_前篇
©NHK 
「女性主人公が出すぎたことをして恥をかく、という展開も、ドラマなどの創作物において“あるある”です」と瀧波さん。

「それは共感を得るためだったり、物語として“恥かき”をひとつの事件にして盛り上がりや成長の機会にしたり、はたまた“女性が恥をかく=面白い”くらいの意識で作っていたり、などの理由でつづいてきた演出だと思います。しかしながらそういった演出は、出すぎたことをすると恥をかく、と女性たちに学習させ、萎縮させる負の効果があるものにほかなりません」

公私の場でそんな想いをした女性は数えきれないほどいるだろう。

「第2~3回のお見合いのシーンでは、男性に面罵されようと顔を赤らめたり泣いたりすることなく、自分は悪くないと確信している寅子の姿が描かれていました。従来であれば女性たちの萎縮(いしゅく)につながりがちなシーンが、エンパワメントになりえるシーンになっていたことに感動しました」