◆アップデート①主人公をおてんばやおっちょこちょいにしない
朝ドラにおいて、“明るく、元気”は“おてんばで、おっちょこちょい”とほぼ同義。これまでの朝ドラ主人公の典型のひとつであった。
「女性主人公にはえてして、“愛される”性格が付与されがちです。この国において女性が愛されるとは、存在を“許される”と同義でもあります。おてんばは少女期だけに許される愛すべき逸脱(いつだつ)なんです。通常、成人女性に“おてんば”は使いませんから。
おっちょこちょいは“誰かが世話してやらないといけない、ほっとけない存在”として、女性としてそこそこの逸脱があろうと許してやろう、と思わせる効果があります」
これまで、そこにはドラマ演出上の必然性もあったと瀧波さんは看破する。
「女性があわただしく動き回って事件を巻き起こし、話を次々に展開させ、それでいて『女のくせにあんなことを』と観る者に思わせない活劇にする……ために、おてんばでおっちょこちょい、という設定は非常に都合がよいのです。しかしそれは、現実を生きる女性たちに対して、知的でしっかりした女性像が示されないということになります」
半年にわたる放映の第1週目にしてすでに、このドラマは“おてんばで、おっちょこちょい”を封印したのだと、視聴者に示したことになる。
「そのうえで、魅力的な女性主人公を作ることに成功しています。それは、寅子がなんらかの疑問を感じたときに言う『はて?』というワードセンスだったり、寅子演じる伊藤沙莉さんの役者としての魅力だったりがあると思うのですが、女性視聴者たちにも『もうおてんばでおっちょこちょいキャラはうんざり』という意識が高まっていたのだろうとも思うのです」