◆人はなぜ集団になると凶暴になるのか?
1923年(大正13年)、9月1日に関東大震災が起きると、都内では災害による心理的混乱から、「朝鮮人が集団で襲ってくる」「朝鮮人が略奪や放火をした」などといった噂が拡散し、それが福田村にも伝播(でんぱ)していく。自警団を含む100人以上の村人たちは、香川から訪れた薬売りの行商団15人を朝鮮人と疑い、激しく追い詰める。そのとき、倉蔵はどうするのか――。
ここでは倉蔵の視点寄りであらすじをまとめてみたが、映画は群像劇で、朝鮮から故郷・福田村に戻って来た澤田智一(井浦新)とその妻の静子(田中麗奈)、沼部新助(永山瑛太)率いる行商人の一行、真実を記事にしたい新聞記者・恩田楓(木竜麻生)、国家の命令第一の軍人・長谷川秀吉(水道橋博士)など、いろいろな立場の人たちの視点が並列して進む。
そこで浮き上がるのは、人はなぜ集団になると凶暴になるのか? という問いである。歴史を題材にしながら、過去の振り返りと記録のみならず、いまなお、群衆の暴力はなくなってはいないという現実が突きつけられるような作品だ。