◆孤独と共存しているような役に猟師生活とのリンクが
俳優から狩猟生活に? その後の近況を語る記事で、ニットキャップをかぶって写っている東出さんは日に焼けて、ヘアメイクにさほど気を使わず、素肌をさらけ出しているように見えた。
『福田村事件』の倉蔵には、その姿が重なって見える。自然と共に生きる孤高の人というような役は、付け焼き刃では演じられない。いまの東出さんにはファッションアウトドアとはやや違う、自然なたくましさが備わって、プライベートの猟師生活と役をリンクさせているように見える。
東出さんの野生味を生かした役は、『福田村事件』がはじめてではない。22年公開の主演映画『とべない風船』では、瀬戸内海の島で生活している漁師を演じている。
これまた、自然のなかでたくましく魚を釣って生きる一匹狼的なのだが、それにはやむにやまれぬ理由があって、過去、豪雨災害で妻子を亡くし、その喪失感によって人間関係を閉ざしてしまったという設定だ。
『とべない風船』では孤独な生活がとても辛そうな役だが、『福田村事件』では孤独は辛そうでなく共存しているような役だ。この違いは、撮影時期に関係しているのではないか。