2010年のジュノン・スーパーボーイ・コンテスト(第23回)での理想の恋人賞受賞を経て、『仮面ライダーウィザード』(テレビ朝日、2012~2013年)で魔法使いに憧れる助手役で注目されるが、仕事が一定ではなく一杯の牛丼を食べるのにも苦労していたというのだ。
俳優としての強みや方向性で悩んでいたとき、『アオイホノオ』(テレビ東京、2014年)の福田雄一監督からまさに救いの言葉をもらう(その後、福田監督が演出した牛丼屋のWEB CMに戸塚が出演するのだが、彼にとっての牛丼屋は救いを求める教会だ)。
当時の戸塚の演技に対して福田監督は「負け芝居が好き」と評した。つまり、自分側からのアクションではなく、むしろ相手の演技を受けての“リアクションの演技”が優れているのだと。この一言でじわじわ覚醒した戸塚は、例えば、福田雄一監督作だと『銀魂2 掟は破るためにこそある』(2018年)のラストで、ひたすら周囲の状況に対して独り相撲的にリアクションしていく表情の豊かさを得た。
ただし、このリアクションの演技法は、別に福田雄一監督オリジナルのものではない。溝口健二監督作に出演した香川京子がひたすら「反射していますか、反射してください」と言われたことなど、日本映画の古典期から俳優が演技をする基本的な方法論だった。
溝口監督の執拗な演出によってリアクションの演技を探求した香川直系の俳優ということではないけれど、いずれにしろ戸塚は現行リアクション型俳優として好例的存在となった。
◆轟の内面に向けたリアクションの演技
直近の出演作だと、中村アン主演のドラマ『青島くんはいじわる』(テレビ朝日、毎週土曜日よる11時から放送)では、第1話初登場の瞬間からリアクション炸裂だ。
戸塚演じる谷崎真司が画面上でまだピントが合っていないというのに、妙に存在感をアピールしているように感じる。リアクションする前からリアクションする気まんまんという域にまで到達しているのだ。