誰よりもショックを受けたのが轟であり、彼にとっての花岡は親友以上の存在だった。轟が花岡に抱く愛情に気づいているよねが、ぐでんぐでんに飲み崩れた轟の元に現れ、カフェに連れてくる。
よねから「惚れてたんだろ、花岡に」と言われ、最初は声を荒げる轟だが、彼は確かに花岡のことを愛していた。ただ、「俺にもよくわからない」と轟が言うように、この時点での轟のセクシュアリティは曖昧である。
花岡を想う轟の眼差しが、まさに愛の告解(告白)を行うような強さとして描かれていたら十分だ。この場面以降、弁護士事務所を設立しようと結束する轟とよねにとってはある意味、設立自体がイコール精神の救いというか、つまり教会的な機能を担うことになったのだと思う。
◆暑苦しさから見出す独自の演技法
冒頭のインタビューではおまけとして、花岡役の岩田のツアーライブに戸塚が足を運んだことも明かされている。朝ドラ俳優ではなくアーティストの姿でステージに立つ岩田を見て「本当にほれた!」と戸塚。筆者もこのツアー公演を2度観たから、気持ちは共有できる。
インタビューの場を借りて「本当にほれた!」と発言する戸塚は、どこまでも律儀な人だと思う。伊藤沙莉の誕生日のときには、プレゼントの六法全書に出演者のサインをもらうために、岩田が所属するLDHまでサインを求めて行く人でもある。
正義と誠実を重んじる轟役の俳優は、現実でも熱い人なのだ。戸塚は自分の熱い性格を役柄に反映させるのがうまい。熱さが暑苦しさまで高められ、大袈裟な演技の沸点を超える演技。彼はそれを武器にしながら、現在までに独自の演技法を見出している。
◆福田雄一監督からの言葉が極貧時代の救いに
彼の演技が開眼した背景にはある映画監督の存在がある。そのことについて、『人生最高レストラン』に出演した戸塚が、極貧時代のエピソードとして話していた。