結果、日本のドラマがパッとしない大きな原因は「予算が少なく、こだわって作品を作る余裕がないから」である可能性が高まったといえるだろう。
これを裏付けるように、海外資本の「日本ドラマ」が隆盛の気配となっている。7月にNetflixで配信された『地面師たち』は、出演者からスタッフまで日本人で占められた「純国産ドラマ」といえるが、豊川悦司らキャストたちの圧倒的な熱演と、画面から漂うヒリヒリするような危ない雰囲気で多くの視聴者を魅了。Netflixの「今日のTV番組TOP10(日本)」で長らく首位をキープし、グローバルでも週間3位に入るなど、配信系の国産ドラマとしては過去最大レベルのメガヒットとなった。
劇中では、豊川演じる地面師グループの狂気的なリーダー・ハリソン山中が集めているヴィンテージウイスキーが出てくるが、総額4000万円ほどといわれるウイスキーはすべて本物がそろえられた。こうした細かいこだわりの積み重ねが画面にリアリティを与えるのだろうが、予算が乏しくスケジュールもせわしない日本の地上波ドラマではできないことだろう。
9月19日からは、同じくNetflixで80年代の女子プロレスブームをけん引した稀代のヒールレスラー・ダンプ松本の知られざる物語を描く『極悪女王』の配信が始まったが、これも視聴者から称賛の声が続出。国内最大級の映画レビューサイト「Filmarks」では、20日時点で5点満点中のスコア4.1を記録している。
先述した『SHOGUN 将軍』の制作費は1話あたり約10億円、『地面師たち』は1話あたり約1億円とされている。日本のドラマは海外展開をあまり意識していないこともあり、ゴールデン・プライム帯で1話あたり3000万円~4000万円とされる。これでは、いくらキャストの演技力やスタッフの技術が高かったとしても『SHOGUN 将軍』や『地面師たち』のような作品を生み出すことはできないだろう。