俳優の真田広之がプロデュースし、主演を務めたDisney+のオリジナルドラマ『SHOGUN 将軍』がアメリカテレビ界のアカデミー賞といわれるエミー賞で史上最多の18冠を獲得した。オーセンティック(本物志向)な日本表現にこだわり、時代劇の経験がある日本人スタッフを招くなど、日本の上質な時代劇をハリウッドスケールで制作したことが世界的な評価につながったと指摘されている。

 同ドラマは、徳川家康にインスパイアされた戦国武将・吉井虎永(真田)を中心に、くせ者ぞろいのキャラクターたちが天下獲りに向け陰謀と策略を張り巡らせる物語。これまでも日本をテーマにした海外のドラマや映画はあったが、欧米における日本のイメージは「スシ、ニンジャ、ゲイシャ、アニメ」といったレベルで長らく停滞し、セットや小道具なども日本と中国を混同しているケースが多々あり、日本人役を中国や韓国などの他のアジア系俳優が演じることも珍しくなかった。

 真田はオーセンティックな日本表現にこだわった。日本人役をしっかり日本人キャストで固め、当時の日本語の言い回し、カツラ、衣装、セット、所作などもオーセンティックにするため、日本から多くのスタッフを招き入れた。セリフも7割が日本語で、いわば日本の時代劇をハリウッドの予算とスケールで撮影した作品ともいえるが、それが米ドラマ界の頂点に立ったのだ。

 これを受けて、業界内やネット上では「日本のドラマがつまらないのは役者やスタッフのせいではなかった」との見方が強まっている。

 近年、配信サービスの浸透もあって欧米や韓国などのドラマが日本で流行し、世間的には「日本のドラマよりはるかにクオリティが高い」という認識が広まっていた。日本のドラマが見劣りする理由として「役者が下手だからではないか」「スタッフのレベルが低いのでは」といった意見もあったが、日本からキャストやクルーを多数招いた『SHOGUN 将軍』が世界的評価を獲得したことで、それらは否定されたともいえる。