◆「スンッ」からの「はて」のセットプレー
司法省で頻繁に顔を合わせるようになった第10週第49回のこと。審議会の休憩時間、穂高が寅子を呼び止めて、自分が法学の世界に引き込んでしまったからお詫びに家庭教師の仕事をあっせんしようとする。
確かにいい話かもしれない。でも寅子の「スンッ」はこの瞬間に「カチン」に変わる。自分は好きでこの世界にいるんだ。それを今さら。冗談じゃない。穂高のトンチンカンな提案に対して寅子は、「はて」を連打する。
よし、本来の寅子に戻ったぞ。「スンッ」からの「はて」のセットプレーのような場面は、あまりにも清々しい瞬間だった。戦前の「はて」から戦後の「スンッ」に揺り戻された寅子が、ほんとうの意味で「スンッ」から解放されたのだ。